メイヴ

日本生まれの新品種「メイヴ」

都市に農を取り戻し、
未来のクラフトワインを育むための特別な品種です。

神奈川県藤沢市で偶然発見された「メイヴ(Maeve)」は、現在各地の醸造家から注目されている日本発の新しいぶどう品種です。限られた土壌や強い日射、都市特有のヒートアイランドといった厳しい環境にも順応し、まさに都市の屋上からワイン文化を育てるために誕生したかのような希有な特徴を有しており、持続可能な都市農業の可能性を切り開いています。
高糖度と高酸を兼ね備える稀有な性質は、濃厚でありながらキレのある味わいを実現し、栽培者にも醸造家にも新しい表現の自由を与えます。農薬や肥料を最小限に抑えられる強健さは、環境負荷の少ないサステナブルな栽培を可能にし、「育てることが、都市を豊かにする」という理念を体現しています。
メイヴは今、屋上から始まる新しいワイン文化の象徴として、東京・川崎をはじめ全国の都市へと広がりつつあります。

メイヴの5つの特徴

特徴
高糖度
凝縮した果実味と深い余韻

東京農業大学の栽培実験では、糖度30(Brix)を記録。高糖度ゆえに、凝縮した果実の旨みと長い余韻が生まれ、豊かなアルコール潜在力を持ちます。遅摘みによってドライプラムのような厚みを、早摘みでは果実の清涼感を楽しめる、幅広いスタイルを実現します。

特徴
高酸
熟度とフレッシュさの両立

メイヴのもう一つの特徴は「酸が落ちにくい」こと。糖が上がっても酸味がしっかりと残るため、熟してもだれない“緊張感のある味わい”を保ちます。これにより、爽やかなスパークリングから重厚な赤ワインまで、多様な醸造スタイルに適応。ワインの骨格と熟成ポテンシャルを支える、稀有な酸構造を持ちます。

特徴
環境適応力
北見から今帰仁まで育つ生命力

北海道北見の寒冷地から、沖縄県今帰仁村の亜熱帯気候まで、実証栽培の成功事例を持つメイヴ。高温・低温・乾燥・塩害といった厳しい環境にも強く、地域ごとのテロワールを反映する柔軟な適応力を示しています。鉢植えでも生育良好で、わずかの鉢コンテナでも果実が充実。屋上やバルコニーでも“都市型ワイン畑”を実現できます。

特徴
病原菌への抵抗力
安定した生産性を支える強健さ

メイヴは、ぶどう病害に対して高い抵抗性を持ち、発病リスクを大幅に低減します。完全耐病性ではないものの、風通しのよい屋上環境では極めて安定した生育を示しています。結果として、作業頻度・薬剤コスト・管理工数が削減され、都市栽培に最適な低メンテナンス品種として評価されています。

特徴
低農薬
手間を抑え、環境にやさしい栽培

メイヴは、病害虫への自然抵抗性が高いため、薬剤や肥料の使用を最小限に抑えられます。

品種誕生の背景

「メイヴ」2019年、神奈川県藤沢市の北部で偶然発見された一本のぶどうの樹から始まりました。
そして醸造し、DNA解析をしたところ、どこにもない品種と判明。後に、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームがゲノム解析を行った結果、メイヴは世界でも未確認の品種で新しい遺伝的特徴を持つ、ぶどう品種であることが明らかになります。
この品種の起源は解明されていないですが、ゲノム解析の結果、ヨーロッパ系の高品質なワイン品種と、アメリカ系の耐病性に優れた台木の性質を併せ持つという、奇跡的なバランスを実現しています。その後、研究は岡山大学大学院へと引き継がれ、さらなる品種特性の解明と、ワイン用ぶどうとしての実用化が本格的に進められています。
“都市でも栽培できるワイン用ぶどう”というユニークなポテンシャルは、都市型農業やマイクロワイナリーといった新しいワイン文化の起点として、多くの関心を集めています。

味わいの多様性について

メイヴの魅力は、単に優れた品種特性にとどまりません。生育の状況や生産者・醸造家の哲学によって、まったく異なる表情を見せる“変化するぶどう”であることにあります。果実の成熟度を見極め、糖と酸のバランスをどう仕立てるか――その判断ひとつで、爽やかなスパークリングにも、奥行きある赤ワインにも姿を変えます。早摘みで軽快に、中摘みで調和を、遅摘みで深みを。それぞれのワインには、生産者の経験と感性が映し出されます。メイヴは、「誰が、いつ、どう造るか」で味が変わる、顔の見えるワイン用ぶどう。その一粒一粒に、人と自然、そして土地の物語が息づいています。

早摘

果実の酸が際立つタイミングで収穫し、糖度19度前後で仕上げる。フレッシュで清涼感ある酸味が特徴のスパークリングワインやロゼに最適です。

中摘

各地の醸造家が主流とする収穫タイミング。糖と酸のバランスが整い、メイヴらしい調和の取れた味わいを表現します。

遅摘

樹上で熟成を進め、糖度が最大化するタイミングで収穫。高糖度で凝縮感のある果実味が生まれ、力強く厚みのある赤ワインや、甘口・デザートワインにも展開可能です。

各地の取り組みについて